なるほど、そういう場には美味しい食事や飲み物も必要ですね。

もちろん。そして、毎回タイプの違う上映作品それぞれにちなんだ食事や飲み物を揃えることができたら、食事を介して映画の楽しみ方も広がるし、会話も弾むだろうなぁと思っていました。「アトリエや美術館だけが、文化を育む場所ではなく、むしろ、それについて語り合う場こそが文化を育む」という話もよく聞きます。
シネカフェを開いて、あぁ嬉しいなぁ〜ってニヤケル時ってどんな時ですか?
お帰りの際に、「今回も楽しかった。次回はどんなものをかけるの?」と聞かれる時、ここで過ごされた時間、料理やプログラムに満足していただけたこと、そして、今後にも期待していただいていることが分かり、ニヤケルどころか毎日の疲れも吹っ飛ぶくらいの至福を感じる瞬間です。
ここの上映会は、料理の準備と座席数の関係で事前予約制をお願いしているのですが、その際にお名前をいただくため、店内ではその方をお名前で呼ぶことになります。すると、ありがたいことにお互いの距離が一気に縮まり、ご注文のやり取りだけではないその他のいろいろなお話にも発展します。
私はオープン当初から、ちょくちょくお邪魔しているので見慣れていますが、まず皆さん、お店の雰囲気と広さに驚かれるのではないでしょうか?とっても上品な空間ですよね。
ありがとうございます。35ミリ映写機による上映とその観客席の確保をするには結構な広さが必要で、その規模の物件となると、なかなか個人の力だけでは借りられないものが多く、正直とても困っていました。
現在の店舗のある場所をお知り合いの方にご紹介いただき、広さも備えたこの個性的な地下の物件がとても気に入りました。事情があって、通常の物件に比べうんと時間と労力がかかることはお聞ききしていましたが、自分の計画が実現できる物件はここしか無いと信じ、執念深くしがみついて計画を進めました。
ようやく動き出すと、今までの努力が報われたかのように、色々なご縁とタイミングが見方をしてくれて、かつて東京駅のステーションホテルにあった「Oakバー」の家具やカウンターを移築できる幸運も転がり込んで来て、オープン当初から、熟成された雰囲気の贅沢なカウンター周りができあがりました。年月の刻まれた貴重な財産を譲り受けたようでとても光栄でしたので、そのカウンターまでのアプローチとなる床材にもヘタな材料は組めないゾと、当初の予算になかった上質のタイルを使うなど、これをきっかけに細かいところまでこだわりだしちゃいました(笑)
凝り性なのですねぇ。
そう、こちらの主役の映写機。これもまた、なかなか目にする機会がなく、訪れる方は興味を引かれるでしょうね。
大きいでしょう?これは、山形の映画館のおさがりなんです。映画館では小窓から一部が見えるだけだし、デジタル上映も増えている今日、こうして間近に35ミリフィルムの映写機を目にする機会は少ないでしょうね。
申し出ていただければ、いつでも、説明付きでご案内しますヨ。
こちらのお店ができる前、
十条の街で小さな上映会を行いましたね。
その時もフィルムと映写機にこだわって、技師さんも呼ばれていましたよね。フィルムのひとコマひとコマが連続して動画ができるレクチャーもなさって…。こちらでは、技師さんなしにご自身で上映なさっていて、すっかり映画館のオヤジさんになっていますけど(笑)
決して、古いもの好きという訳ではありません。100年以上も前に発明されたものが、未だにほぼ当時の仕組みのママ動いているフィルムや映写の原理は、それだけでとても興味深いことだと思っています。
利便性や経済性だけで結論を急ぐのではなく、これまで支えてきた原理や特性を知ることは、デジタルで何かを作る時にも、決して無駄ではない知識です。フィルムで撮影されたものは、フィルムで上映する方が、撮影された色を正確に再現するはずだし、その逆もまた然り。それぞれの原理や特性を理解した上で、様々な状況に合わせてそれぞれを利用すると、結果的に、効率がよく品質も優れていることはよくあります。
あの上映会では、子ども達に、映っている映像を見てもらうだけではなく、アニメーションの原理を理解してもらい、部屋に拡げた繋がったままのフィルムにも触ってもらうことで、「ものが動くように見えるのは、決して自動的になされることではなく、各段階で先人の知恵や技術が関わっていることを、映写機の駆動音まで含めて見て感じて欲しい」と企画しました。実際に、自分でフィルムを繋いだり映写してみると、「ただ映画を上映する」などと馬鹿にしていた頃には想像もつかなかった色々な苦労や失敗、そして、新しい発見も沢山あります。
個人でここまで大規模なカフェをつくられて、ご苦労も多かったと思いますが、いかがですか?
おかげさまで、
フードアーティストのTAROくんをはじめ、様々な分野に渡るお知り合いの方々のご協力を得て、オープンすることができました。慣れないことばかりの連続で、夢中でやってきた感じです。
今ようやく毎日の営業にも慣れ、少し落ち着いて色々なことが見えるようになってきたというところでしょうか(笑)
まだまだ、やりきれていない課題も沢山あり、あれもこれもと考えるとパニックになりますが、ご期待にこたえられるよう、日夜努力しているつもりです。
もうすぐ1周年を迎えられますね。
これまで洋・邦画の上映、映画に関連するトークショーやコンサートなど、毎回目先の違う上映会をなさってきて、通常のカフェのメニューも充実されてきていますが、今後はどのような計画をお持ちなのか、こっそり教えてくれませんか?
法規上、ここは映画館になれない空間なので、逆に、「映画館がやっていないことをやって行こう」というのを、いつからか、このシネカフェの特徴と意気込みを示すモットーにしていて、それを基本に、お客様との会話の中で思いついたことなども含めて企画を考えます。そういった企画を実現できる柔軟性を備えているのが、実は、「カフェ」という便利な存在でもあります。
僭越ですが、このカフェを舞台に、地域の方が交流出来るような企画になればと思い、現在進めているものがあります。それは、ご近所の
東京家政大学の学生さんに、店内のソファーのカヴァーをデザイン、製作していただくデザインコンペです。デザインを学ぶ学生さんにとっては、外部の方の評価に直接触れることのできる良い機会になるはずですし、「どの学生の案が、上映会の時のソファーにはピッタリだ」など、お客さま同士のいろいろな話題も膨らみそうで、とても楽しみにしています。

そうですか!それは面白そうですね。
この白いソファーカバーが、個性豊かなデザインになるのでしょうね〜。賑やかになりそう、楽しみです♪
秋には、ある団体の方々とご一緒に、かつて、今のヴィデオのように多くのご家庭で撮られていた8ミリの上映会を企画中です。ご家庭の押し入れに忘れ去られているようなホームムーヴィーの上映会は、古くからお住まいの方にとっても、最近転居されていらした方にとっても、この地域のかつての姿を映し出す貴重な機会になるはずです。
併せて、それにちなんだ一般の映画作品の上映も考えているのですが、僕もかつて観たことのある作品が、主にこの地域でロケされていることを、最近、お客さまに教わりました。これの上映も面白そうでしょ?
他には、上映会にいらしたお客さまの需要から、乳幼児を持つご両親のための上映会なども構想中です。いずれも、先ほどの「映画館がやっていないこと」、「地域の交流点となること」をキーワードに、お客さまとの何気ない会話の中から、沢山のヒントをもらっています。
ホント、精力的に面白い企画を運営なさっていて素晴らしいですね。これからも楽しませて下さい、今日はありがとうございました。